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"Wessay"とはWeb Essayを約めたオリジナルの造語です。

東北ツーリング2010 (3) [Wessay]

~ 遠野物語ゼヨ ~

確かに駅ではある。宮城県と岩手県の県境でもある。沼じゃないことぐらいはもちろん知っている。
でもあこがれの気仙沼は想像とはまったく違っていた。

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千葉の御宿駅みたいな感じ

まだ6時半だというのに観光案内所の明かりは当然のように消えていた。
とっくに閉めたかのように人の気配がまったくない。
そもそも駅前を歩いている人がひとりもいない。
かろうじて人の気配がするのは、客待ちのタクシーが数台停車しているからだ。

さてどうしたものか。電話帳で宿を調べようと、電話ボックスへ向かって歩いていると
観光案内所の側面に案内板が立っているのを見つけた。
市内の地図に観光スポットや飲食店などがスポットされている。
民宿は緑の○印、ホテルは青い○ということを確認し終わった瞬間、緑の○の密集地を見つけた。
しかしそれは島だった。

”陸中海岸国立公園と海中公園に指定されている気仙沼大島は気仙沼港から船で30分で行ける”とさ・・
バイクでは永遠に行けないよ・・・
他にないかと地図を隅まで見ていると、岩井崎という気仙沼湾の入口の岬付近に何軒かある。
さっき夕焼けを見たところの近くだよ。あーあ。

しかし、普通のホテルに泊まるよりは民宿が断然いいのだ。いいに決まっている。
看板の下の詳細欄にそれぞれの宿の電話番号が書いてあるので、上から順に架けてみることにした。
が、どこも満員だった。シルバーウィークのど真ん中だもんね。。

しょうがなくホテルにすることに。
気仙沼駅のまん前にひとつだけ青い○がついている。
看板からそのまま目線を上にあげると、そのうすら寂れたビジネスホテルの看板が見えた。

バイクはそのまま駅の郵便ポストの前に置き去りにしてヘルメットも被ったまま歩いて行った。
ロビーに入るなり「絶対空いている」という確信を持ったほど、ホテルパールシティ気仙沼には静かな空気が漂っていた。

客のなりを見たフロントマンは、「屋根付き駐車場というわけじゃないですが、一応濡れないスペースがあります」
と言って、駐車場の入口で待ってくれていて、従業員の原付などが停めてある場所に誘導してくれた。
さすがは気仙沼である。

フロントで前払いの料金を払いながら、どこか食事ができるところはありますかとたずねると、
「当ホテルの2階のお食事処でもご用意できますが、外に行かれるとすると街中のほうまでタクシーで行くことになりますね」

しかし、ホテルのレストランで食事なんてまっぴらごめんだという強力なテレパシーが通じたのか、
フロントマンは付近の案内図のチラシを出しながら、
「こちらの居酒屋さんでしたら歩いていくことができます」
さすがは気仙沼である。

部屋に入って熱いシャワーで身体を暖めていると、やっと生きた心地がしてきた。修行はおわりだ。
民宿に泊まるつもりだったので、というのは後付けの言い訳だけど、ろくな着替えは持ってきてない。
夏用のトレパンにTシャツ、それにビーサンを突っかけてホテルを出た。

さっき通ってきた商店街らしき通りにはほとんど人影がなかった。
ワイシャツ姿のおじさん二人とすれ違い、反対側におばさんをひとり見かけただけ。
そして4人目の通行人は右手のスーパーから出てきたOLらしき(若くない)おねえさんだった。

一旦スーパーの前を通り過ぎたが、引き返すことにした。
何故なら寒いからである。
このまま歩いても居酒屋に着く頃には完全に湯冷めしている。
店の中もさすがにまだ暖房はしてないだろうから、この薄着では多分ゆっくり飲み食いしてられない。
最悪は風邪を引く。

という脳内シミュレーションの結果、さっきのおねえさんが出てきたスーパーに入った。
惣菜コーナーに直行して、目についたのは”鰹のタタキ”。表示をみると”気仙沼産”。
お買い上げである。
それと握り寿司をひとパックとカボチャのてんぷらを購入。それともちろん、ビールとお酒。
こんだけ買って約1300円!

ということで部屋に戻ってひとり宴会だー!
足元に置いたブーツをドライヤーで乾かしながら、意外にうまいカツオと無闇にぶ厚いカボチャをむさぼった。

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気仙沼ばんざい!

ベッドの寝心地や枕の高さなどまったく気にならずにすむほど泥のように寝倒したがじゃった。。。

(本日の走行距離 510km)

*

何かうるさいなぁと思ったら、テレビが点けっ放しだった。午前4時。
相当寝たのにまだ眠い。窓の外はまだ暗いが、起きてもいい時間だ。(理由はあとで)
目を覚ますためにシャワーを使い、そそくさと支度をしてチェックアウトした。
午前5時。雨は降っていないが気温は結構低い。

これから盛岡を目指すのだが、駐車場を出て、もう一度気仙沼駅に行ってみた。
それから線路に沿ってしばらく進み、45号線にぶつかったところでこんな光景に出会えた。

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お月様の串刺し

しかし早めに出発した理由は月ではなく、朝日を見るためなのだ。
陸前高田まで45号線は東浜街道というらしいが、気仙沼は少しだけ内陸にあるため、なかなか海沿いに出ない。
10キロほど走って、やっと海が見えたときにはすっかり夜が明けていた。ざんねん。
でも海岸線を走りながら見る景色はよかった。天気も昨日の修行の賜物のようにどかんと晴れたゼヨ。

いよいよ岩手県に入り、陸前高田からは国道340号線、高田街道で遠野を目指す。
早く出たもうひとつの理由は遠野に寄り道するためだった。
ただ気仙沼から盛岡へ高速を使わずに向かうとしたら、遠野を通るルートは遠回りではない。

高田街道が世田米街道に名前を変えるころにはすっかり山の中だ。

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さらにしばらく進むと、目指す方向はとっても怪しい様相を呈していたのじゃった。もう修行はイヤだ。

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朝もやとはとても言えないよ

標高とともに気温も下がってきたし、雨は降らなくても”濡れる”予感がしたので、路肩に停車して合羽の上だけを着用した。
さあ、まさに”行く先は霧の中”だけどレッツゴー!ゼヨ。

*

気持ちよく暖かいトンネルを抜けると、いつのまにか283号線、遠野バイパスを走っていた。修行はせずに済んだ。
釜石線青笹駅を過ぎたところに左遠野市街という標識があったので曲がってみる。
すると間もなく遠野の真ん中を流れる早瀬川に差し掛かったので、ふと川面を見下ろすと・・
ほとんど市街地のような場所なのに、こんな人がいましたよ。

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鮎釣りでしょうかね

そのまま道なりに行くとさっきの遠野バイパスとの交差点に出た。
340号線はこの交差点から直進方向に再度はじまるのだった。ラッキー。
そう、寄り道したいのは遠野から340号線を少し北上したところにある観光名所「カッパ淵」なのだ。

ガソリンタンクはとっくにリザーブなのだが、そこまで行って街中に引き返してくるくらいは問題ない。
途中にまた、走って通り過ぎるだけでは何とももったいない景色があったガヨ。

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カッパ淵はこの左手奥の方向

そこは車が一台やっと通れるような、民家の脇の私道みたいな道を少し入ったところにあった。
観光バスなんかでやってきた人は多分少し離れた駐車場から歩いてくるしかない。
常堅寺の境内を突っ切った裏手にあるようだが、まずはお参りをした。順番は大事である。

お参りし終わって奥に進もうとしたとき、不意に「おはようございます」と声をかけられて驚いた。
普通の洋服を着ているが、どうやらお寺のひとのようだ。
遠野物語の出だしは ”願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ” だけど脅かさんでほしいチヤ。
そしてカッパ淵にも人影が・・

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ミョウガを洗うおばあちゃん

そして淵の真ん中にぶら下がっているのは・・
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ま、シャレだわね・・

さあてお腹もすいたし、どっかで朝ご飯を食べようということで340号線を街中に向けて引き返す。
さっきの交差点を右折したところにGSがあったので、まずはバイクの朝メシだ。
若い店員のあんちゃんに「ここら辺で食事できるところはありますか」とたずねると、

「まぁだどこもやってないですねぇ、コンビニくらいしかないですよ」
「あーそー、まだ8時だもんねぇ」
「遠野の朝はゆっくりなんですよ」

そのGSの向かい側がまさにコンビニだったのだが、遠野に来て朝飯がコンビニってのは・・・

「盛岡方面に行きたいんですけど、このまま道なりに行けば大丈夫ですかね」
「道なりに行くとだんだん上り坂になってそれから今度は下り坂になります。下りきったところの交差点にスタンド、もうやってないですけど、そこを右折してください。そしたら盛岡方面に行けます」

ドライブインか何かあるだろうと勝手に決めつけていざ発進。
すると、言われた上り坂の途中に道の駅”遠野風の丘”発見!なんだいい所があるじゃないか。

しかし入ってみるとまだやってなかった・・・ やっぱり、あんちゃんの言うとおり、遠野の朝はゆっくりなのだ。

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開店準備はしてたけどね・・

開店まで待っているほど時間の余裕はないので先を急ぐのだった・・と思ったら沿道にこんなところが・・

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南部曲り家 千葉家

見物しているヒマはない、お腹もペコペコだし、ちょっと惜しいけど先を急ぐ。
が、396号線はひたすら山の中。メシが食えそうなところなんかなんにもなかった。

*

遠野と盛岡のちょうど中間、紫波郡紫波町というところに入った途端、産直品販売所みたいなところがあった。
花や植木が目に付いたが、店内では野菜や果物を売っていた。
そこでおいしそうな炊き込みご飯のおにぎりを発見!やったー!と思ったが買わなかった。(何故かはヒミツ)
でも他にはご飯ものがなーんにもない。ウソだと言ってつかーさい!
と、何やらふしぎなものが並んでいるのを見つけた。

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がんづき
 
要は蒸しパンみたいなものなんだけど、クルミなんかがトッピングされていてちょっと都会的でかつ自然食的。
自販機でカフェオレを買って、案山子コンテストの広場で食べました。

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まったく絵になってないけどおいしかった

あーやっと一心地ついたゼヨー、って言っている場合ではなかったガヨ。
実は、今日の待ち合わせ場所は盛岡ではなく、八幡平なのであったのです。待ち合わせ時刻は11時!

間に合うのか・・・?


つづく

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東北ツーリング2010 (2) [Wessay]

~ 何の修行だよ って話ゼヨ ~

作業着の胸のチャックを閉めながら、旭輪業の店主は眠そうな顔をして無言で店先に出てきた。

「すみません、朝早くから」
「いやいや大丈夫ですよ、このバイクですね。ちょとキーを回してみてください」
「さっき一瞬だけ点いたんですけどね」
「バッテリーはどこにあるんですか?サイドカバーの中ですか?」
「あ、シートの下ですけど、バッテリーは半年前に交換したばかりなんですよ」

荷物を降ろして、シートを外して現れたバッテリーを見るなり、店主は
「あー、接触不良ですね」
「えっ??」

プラス端子は例の赤いカバーがかかっていてもちろん見えない。
マイナス側の端子のボルトも垂直方向になっているので、ちょっと見ただけでは異状なんてわからないが・・

店主は無言でドライバーを手にし、締め付けはじめた。
「やっぱり緩んでましたね、ちょっとキーを回してみて」

まさかそんなと思いながら、キーを右に回すと・・・
「あ、点いた!」
「エンジンかけてみてください」

セルボタンを押すと何もなかったかのように一発でエンジンがかかった。

「バルルルルッ! ブォンブォン!」

そりゃ当然だという顔の店主の手にはすでにテスターがあり、バッテリー端子につなぎ終わっていた。
「えーと、ちょうどぴったり12ですね、もうちょっとあって欲しいんですけどね」
といいながら、アクセルを回してエンジンの回転を上げる。

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「ぶぉぉぉぉぉぉ」
「あー、吹かすと上がるからいいですね。充電はされてますね」
「このバッテリー、ネットで買って、自分で交換したんですよ」
「んー、やっぱりねー、これ国産じゃないでしょ。国産がいいですよ、高いけどねー」
「日本語の表記があるけど多分国産じゃないと思います・・」
「外国の安いやつにはたまにやられるんですよ、突然アガッちゃうことあるんですよ」
「へー、そうなんですか」

「ところでどっから来たんですか?」
「今朝、千葉を出発して、たまたまそこのキグナスで給油したら、スイッチ入んなくなっちゃったんですよ」
「そしたら目の前がバイク屋だったって?」
「そうなんです」
「そういう人もいるもんだね~」

感心しているのか呆れているのか、あるいは両方なのかわからなかったけど、
「まぁ、よかったですねぇ」と嘆息しながら、店主はプラス側も増し締めしてくれていた。

「実はこれから東北を回ってこようと思ってるんですが、このバッテリーで大丈夫ですかね?」
「それは神のみぞ知るだねっ(笑)」
「はははは、そうですかぁ」

バイクを挟んで向かい合う店主の顔が光り輝く仏様に見えたことは言うまでもない。

「こんなハプニングもなかなかないんで、記念写真を撮ってもらっていいですか」
と頼んだら、仏様はニコニコしながら、
「じゃあ折角だからうちの看板の前に立って」

ベニア板に描かれた手書きのゴリラとのツーショットをカメラに収めて、日立市水木町を後にしたがじゃった。

*

自分の運のよさなど特に評価するべくもなく、小雨の中、245号線を終点まで辿ると日立北で国道6号線(陸前浜街道)となる。
高速には乗らずにこの「ロッコク」をひた走るのは予定通りだったのだが・・

勿来の関を過ぎて福島県に入り、いわき市あたりを通過する頃には雨が本降りとなってきた。
しかも気温も下がり、道路の上に表示されている電光掲示板には「13℃」!
あのねぇ、昨日は30℃越えてたんだよね。千葉だけどね。20℃も違うとキツイんだよね、さすがに。
などとヘルメットの中で恨み節を唱えたところでどうにもなるわけがない。

長距離トラック用のパーキングの表示があったので、暖を取ろうと立ち寄ったけど、
トイレがあるだけ!自販機も何もない!!
ま、用は足して、バッグからペットボトルのお茶を出して水分補給は一応できた。
まだまだ先は長いゼヨ・・


昼も近づき、お腹もすいてきた。皮算用では仙台あたりで昼飯のはずだったが、それはもう無理。
雨も本降りのままだけど、もう少しもう少しと言い聞かせながら距離をかせぐ。
たしか福島や宮城の天気は午後から回復という予報だったはずじゃったしのぉ。。

ところが、雨はじわじわと勢いを増している気がするのはオレだけ? いや、他に誰もいないけど・・
手の指がカジカンで、ちょっと感覚がなくなってる気がするのもオレだけ? そう、アンタだけです。
てな具合にひとり脳内twitterするのも疲れはてた頃、道の駅を発見!

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屋根付きの駐輪場!よかった~

12時半、着いたのは「野馬追いの里 道の駅 南相馬」  ともかく休憩じゃー。

一応ライダー用レインスーツなんだけど、首筋をつたって水が浸入したのかジャケットはじっとり湿っていた。
レインスーツとジャケットを椅子の背にかけて応急乾燥させるべし。「暖」と「乾」と「休」を補給するべし!
「暖」のほうは迷った末に「当店人気一番」の文字にさそわれて「野菜ラーメン」の塩に決定~。

少し混んでいて、待っている間にあったかいお茶を3杯飲みながら周りの客の姿をみると、
みんなジャンバーや上着を羽織っている・・ま、こんだけ寒いと当然だわね。。

テーブルに広げていたバンダナがちょっとだけ乾き始めたころにラーメンできあがり!

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温度差ですごい湯気!

ラー油を入れてさらにホットにしたらもう最高。ゆっくりとスープまで完食したチヤ。
(前日に津田沼の某有名店で食べたラーメンより5倍(当社比)はおいしかったね ^^)

しかし、食べ終わってもまだ身体は十分に暖まってない。もっと暖をとるべし。休もとるべし。
ということで休憩所に移動して缶コーヒーをすすりながら道路情報や天気予報をチェックしていると・・
通過してきた町や行く先の仙台は降水量1ミリ。福島も1ミリ。ここ相馬付近は降水量4~10ミリ。
ってオイオイ、ここだけが土砂降りっちゅうことかーい! というよりも、ひょっとして雨雲と一緒に移動中?

とほほと思いつつ、休憩所の一角に何やら写真がたくさん展示してあったのでフラフラと立ち上がって鑑賞。
鎧も飾ってあったので何だろうと思いながら見てみると・・

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「野馬追い」ってこういうことだったのね

あー!自分も急がねばっ もう2時過ぎてるし。。
実は翌日、ある場所で友達と待ち合わせをしているのだ。
その場所はまだはるか遠い所だ。だから今日の到着地点によって、明日の行程のキツさが変わってくるガヨ。

でもって、その友達に現状報告メールをして出発。
「現在、仙台の手前80キロ。できれば花巻あたりまで辿り着きたいんだけど、悪天候のためおそらく無理。最悪は仙台泊りかもしれない。」


着いたときよりは少し小降りになっていた。しかし仙台が近づくにしたがって、道路が混んできた。
予定では多賀城から塩釜を通って松島を見ながら石巻へ向かうつもりだった。

岩沼市でロッコクは終了し、国道4号線に入った地点で2回目の給油がてら、レジの前のテーブルでひとり作戦会議。

やっぱり花巻まで行くのはあきらめよう。予定通り高速は使わずに下道を走ろう。
でも道路状況がわからないから行けるとこまでということにしよう。
よし、会議終了。
店の電話で(おそらく)地元の友達と喋っていた店員さんの会話は生粋の東北弁のためまったく意味不明だった。

仙台バイパスは片側3車線の広い道だが交通量も多い。仙台東部有料道路へ導く緑の看板が気になる。
多賀城方面に右折して4号線を離れた途端、またもや土砂降りに近くなってきた。心が折れそうだ。
「今日は仙台に泊まっておいしいイワシ料理か牛タンでも食べようよ」
という甘い文章を脳みそが繰り返し繰り返しタイプしはじめた。

「うううう、仙台じゃ明日がつらい、もうちょっと稼ごう!」
「その代わり、高速じゃー!」

ということで、仙台北から三陸自動車道に乗る。
塩釜を過ぎて、松島ICを通過するころは80キロ出すのがやっとのような大雨。(なぜか速度制限してないし)
「どうせこの天気じゃ松島なんて見えなかったもんねー」
とイソップ物語のキツネは風雨と寒さにふるえながら、何かの修行に耐えるのであった。(何のだよ)


石巻の手前で料金所があった。
ウエストバッグの中からやっとこ通行券を取り出して係員のおじさんに手渡し、料金を払った。
でも進行方向を眺めると、高速道路はまだまっすぐ続いているので、不思議に思い、聞いてみた。
「この先はもう料金所ないんですか?」
「はい、ここから先はずっと無料ですから、もうありません」
「気仙沼方面に行きたいんですが、どこで降りればいいですか?」
「終点のひとつ手前の桃生津山で降りるか、終点の登米まで行ってもいいですよ」
「どっちで降りても道なりに行けば大丈夫ですか?」
「そうですね、はい」
と言いながら、チラシのような一枚の周辺地図をくれようとしたが、丁重に断って発進した。
(そんなもん見てるヒマはないチヤ)

こうなりゃ終点までである。
片側1車線だが車はほとんど走っていない。でもあまりの大雨でスピードはだせない。

石巻を過ぎた。まだ夕方のはずだが、夜のように暗い。高速に乗ってよかったと思った。
長い無料区間を辿って、終点の登米ICを降りたころ、まるで夜が明けるように空が薄っすら明るくなった。
そういえば雨も小降りになっている。

国道398号線、本吉街道を太平洋に向けて東に進む。
交通量の少ない田舎の山道が峠に差し掛かる頃、森の上空は茜色になりはじめていた。
「よし、今日のゴールは気仙沼に決定だ」
峠を越えて下りきると海岸沿いを走る国道45号線にぶつかる。これを海沿いに北上すればいい。

この辺はもういわゆるリアス式海岸のはずだけど、想像していたのとはちょっと違った。
国道は海岸線にずっと沿っているわけではないからかもしれない。
なんか期待はずれだなぁと思っていると、こんな風景に出会えました。

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大谷海岸付近かな?
(北を向いて撮影したつもりですが、なぜかその方角に夕焼けが・・)

人っ子一人いなかったので大事な用も足し(笑)、いざ行かん。
もうまもなく気仙沼だし、まだわずかでも明るさがあるうちに宿を見つけたい。
できれば民宿に泊まりたいので、看板を見逃さないようにしないといけないのでシールドをあげて走る。

でもまったく見当たらない。とうとう陽もとっぷり暮れてしまった。
その内に気仙沼市街への案内標識が現れたので、45号線を離れて街中へ。
すると様子は一変。ホームセンターやスーパーやビルも立ち並んできた。
街灯で明るいけど、こんなところにゃ民宿なんかないわなぁ。

逆戻りして45号線沿いを探すかどうしようかと迷っているうちに市街地も終わりかけてきた。
こうなったらこのまま突っ切って45号線に乗りなおしてから探すか、と思った矢先、左気仙沼駅の表示が。

「おお、名の聞こえた土地の名だから駅まで行けばなんとかなるじゃろう」と思って左折。
なんか寂れた商店街のような通りを抜けたところの右手に駅はありました。

これが気仙沼駅・・・?


つづく

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東北ツーリング2010 (1) [Wessay]

~ 陸奥(みちのく)を目指してみたゼヨ ~

遠足の前夜の子どものように、わくわくして眠れないということはさすがにもうなくなってしまったのに、とくに目覚ましはかけてなかったが、ふと目を開けると午前3時半。
「まだ早いな、うとうとしよう」と思って、うとうとし、次に目を開けたら4時を少し過ぎていた。
ここで「支度していたらすぐ5時になるぞ」と考え方を変えるところが子どもと違うところゼヨ。

前日に一応荷造りはしてあったので、再確認作業と着替えさえすればいい。
ただ今回のツーリングで絶対に忘れてならないものは、手拭いとサンダル。
あとは替えの下着と合羽とカメラがあれば問題ないゼ。

窓の外の未明の空は曇り。昨日は真夏日だったが今日は夏日にもならないらしい。
少し迷ったが夏用のライディングジャケットとパンツを選択した。
ただし、中には薄い生地のトレパンと長袖シャツを着込んだガヨ。

新聞がまだきてなかったので、ネットで行き先各地の天気予報や天気図を確認したり、ルートの再確認ついでに要所の観光スポットなどを見ていたら、もう5時を過ぎちょった。
(ちなみに高速・有料道路はなるべく使わない予定なガヨ)


バイクのエンジンをかけて暖機しながら、荷物をリアシートに固定して準備完了。
いよいよ明るくなりはじめた午前5時半、愛車X4発進!
目指すは岩手ゼヨ。(きわめてざっくりとした目的地である 笑)

出発早々であるが自分のガソリンタンクがエンプティーゆえ、幕張PAへ入る。
営業は6時からなのでまだ食堂などはやっていないが、コンビニは開いていたのでパンをひとつ補給した。
これでほんとに準備万端、あとはひたすら走るだけ。午前6時、再出発ゼヨ。

高速道路なのだが、先は長いので、制限時速よりも少し遅いスピードでゆっくり走る。
そもそも体力温存のために、初っ端は高速道路で距離を稼ぐ作戦だったのに・・・

東関東自動車道に入るといきなり降りだした。予想よりも早く天気はくずれたのじゃった。
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橋の下の路肩に停車して合羽を着用し、再々出発ゼヨゼヨ。


終点の潮来からは51号線に乗り、鹿島スタジアムの前をとおって太平洋側へでる。
小降りの雨の中、そのまま(海は見えないが)海沿いをひた走る。
まだ朝も早いためか自家用車は少なく、順調、順調。


大洗を過ぎて、大串町というところで緑色の有料道路標識が目に入る。
「東水戸道路 無料化実験中」と書いてあったのじゃった。
路肩に停車して地図を確認。(ちなみに今回はナビもないガヨ)
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これに乗れば、日立市方面245号線へショートカットできることが判明。行くべし。
乗ってみてわかったが、終点まで行くと有料。ひとつ手前の「ひたちなか」で降りれば無料。降りるべし。

ところが・・気分よく出口に向かうと、料金所では大勢のポリスメンが検問しよったガヨ!
どうやらシートベルトの検問だったようでバイクは見向きもされなかったけど、いくら交通安全運動期間中とはいえ、無料出口で待ち伏せって・・・一体何の”実験”じゃーっ!!
(写真はあえて撮りませんでした)


東海村を過ぎて日立市に入り、午前8時半。今度はバイクに朝ごはんをあげなければ。
首都圏では見かけなくなったけど、茨城県内では目に付く”キグナス”があったので入る。単価127円。
満タンにして代金を払って、ついでにトイレを借りて、さあ出発。イグニッションをオン。

ん?ランプが何も点かない。ニュートラルの緑もオイル警告の赤も。もちろんヘッドライトも。
バッテリーあがり?いやいやこんな急にあがることはないでしょ。セル押しても全く無反応だし。
あ、キルスイッチに触ったか?いやいやオンになっている。

えーっ何が起きたのだー、とパニックになりかけたがそこはぐっと堪えて冷静に。
接触不良を疑って、何度か車体を揺さぶって、メインキーのオフオンを繰り返す。
すると一瞬だけランプが点いた。でも、すぐ消えたので始動はできず。
イグニッション自体が壊れたとすると、押しがけしてもウィンカーも点かないのであれば走行できない。

これは手に負えないと思って、店員さんに電話帳を借りてバイク屋を探すことにした。
バイクのトラブル受付の番号が日立市内のエリアを分割して2つ載ってたので、店員さんに
「ここはどっちのエリアに入るんですかね。」
「えーと、住所は水木町なんでこっちじゃないかと思いますが、バイク屋さんだとそこに一軒ありますよ。」
指差す方向は国道の向かい側、キグナスの真正面。自転車屋さん”旭輪業”の看板が光り輝いちょった。
「じゃあダメモトであそこに架けてみます。」
「今日は旗日だし、朝早いからやってないと思いますがね」
という、のんびりした茨城弁の店員の意見は聞き流した。

電話にはおばあちゃんがでた。
「バイクの修理をお願いしたいのですが・・」
「大きいバイクですかぁ?」
「えー、まぁ大きいです。」
「ちょっと待ってください、今代わりますから・・」
しばらく保留音を聞きながら、「小さいバイクというのはひょっとしておばあちゃんにとって自転車を意味するのか?」などとあれこれくだらないことを考えていられるほど待って、やっと店主(ばあちゃんの息子)らしき人がでた。

「イグニッションがオンにならないんですよ、キーは回るんですが。」
「バイクの修理はお預かりになりますが。」
「いやー、実は千葉から来てまして、動かないと困るんです。」
「でもねー、これから引き取りには行けないので、店まで持ってきてもらわないと。」
「今、そちらの店の向かいのガソリンスタンドからかけているんですよ。」
「あらそうですか、じゃあみてみますから持ってきてください。」

国道を横切って、坂道をほんの30メートルほど下ったところに店はあったので、重いX4でも楽勝でたどり着いた。
よくある、町の自転車屋さんに入り、店の奥の台所のような部屋に向かって声をかけると、くだんのおばあちゃんがでてきた。
「まあまあ、いらっしゃいませ。どうぞお掛けください。」
と店内の椅子をすすめられたが、とてもゆっくり世間話をする気分じゃないゼヨ。
「朝早くからすみませんが、あのバイクをみてもらえないでしょうか。」
「ちょっと待ってくださいね。おーい、さっきの電話の人、もう来たよー。」

こっちの逼迫感が伝わったのか、おばあちゃんは椅子から立ち上がって家の奥にひっこんでいった。
それからしばらくして、階段を下りてくる人の気配がして、起きぬけと思われる作業着姿の息子が現れた。

息子の頭も光り輝いちょった。


つづく


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愛でるということ [Wessay]

散策

とある美術館の裏には半自然の森がある。
目的もなく、そぞろ歩くには何の不満もない。
雑木林やせせらぎ、人工池を辿る散策道が所要時間が計算できる程度に延びている。

最初に迎えてくれたのは意外にも、大柄で派手な百合たちだった。
2992074「よくきたね。」
2992190「こんにちは。」
「やあ、ごきげんよう。」

木立の下草に紛れて、名もない花がまるで円陣を組むように木漏れ日に向かって顔を上げている。
2992069「今日はいい天気になったよ。」
「そうだね。木立の中のほうがかえって涼しくていい気分だろうね。」

陽が当たる側の藪の中にはこっそりと真っ赤な実が成っている。
鳥たちにだけ自分の身体を差し出すように・・・
「ごめんね。見つけちゃったよ。でも私は採って食べることはしないからね。」

2992071「もう十分に熟してしまったから、早く食べてほしいんだよ。」

少しだけ標高のある森の中は、7月になってもまだ紫陽花が咲き、蜂や蝶や蜻蛉も飛び交っている。
蛙もしっとりと、そして少しだけひんやりとした紫陽花の葉の上でくつろいでいるようだ。

2992075「ちょうど今朝、小雨が降ってくれたんだよ。いい気分だね。」

羽黒蜻蛉が私の歩く先を道案内でもするようにふわふわと浮かび彷徨っている。
ある程度距離が離れると葉の上に舞い降りる。
それから「いち、に、さん」と数えると、一回だけ羽を広げ、そして閉じる。
ほら、いち、に、さん。

2992191「どうも神経質でね。羽がぴったりと閉じないと嫌なんだ。」
今度は別の蜻蛉が道案内。
でも、いち、に、さん。

2992192「みんなやるんだよ。真似してるわけじゃないんだよ。」

ぴたりと羽を閉じると居住まいがいいんだね。
私もそんなときがあるけれど、どうもみんなとは開き方と閉じ方が違うみたいなんだよね。
そうやって君たちみたいに静然とはいかないね。

2992193「そうなのかい。でも、ぼくたちは何も気にしてないよ。」
「そう。それがいいね。」

燦々と陽のそそぐ水辺には何頭もの蝶が飛び交っている。
飛び回ってばっかりいるように見える。
疲れないのかしらと要らぬ心配をしてみるけど、それこそ何の意味もない。

2992067「飛ぶことなんて、何の苦労もいらないわ。」
「そうだったね。何百キロ、何千キロと飛ぶ仲間もいるんだったね。」
じゃあ、私に与えられた能力はいったい何なのかしら?
飛べるとしたら、一体どれくらい飛べるんだろう。

「君はどう?」
2992194「あぁ気持ちいい。」
行く先は羽に聞いてくれってことだね。
私には問いかける羽がないから、二本の足にでも聞いてみるね。

命って何だろう。イノチ。生命。being...
Human being... Everything being...

ねぇ、ちょっとだけでいいから交代してくれないかな。
そして今度は私を愛でてくれないかな。
2992195
You are very wellcome.


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PEARL BOWL [Wessay]

東京ドーム

突然ですがアメフトの試合を見に行ってきました。
”パールボウル”というのは、社会人1部リーグ(Xリーグ)の前期優勝決定戦です。
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第2クォーターまではロースコアの守備合戦。

ハーフタイムショウは・・・いいっすね(^^
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後半になって選手たちもボロボロに・・・
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さてさて優勝のゆくえは・・・
2935006←優勝トロフィー

最終第4クォーターでやおら試合が動き出し・・・
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この状態で残り1分。
オービックのフィールドゴールのキックが決まれば同点で延長戦・・・・さて・・・・

なんと30ヤードの比較的短いキックをはずしてしまいました。
プレッシャーだったんでしょうね。。。

でも、思いのほか楽しい試合でした。
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やっぱり、アメフトは面白い!

今回のオマケ
2935026フェイクじゃありません。ちゃんと生きてる木です。


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